今年2月末、ドイツ社・エルリングクリンガーの高性能材料アジア本部プロジェクトのオーダーメイド工場は、中独両国唯一の政府間協力産業パークである青島中独生態園で順調に引き渡されました。記者が4月2日に施工現場で見た限りでは、同工場の本体はすでに棟上げが完了し、ドアと窓のガラスもほぼに設置完了となりました。工場の内部では、作業員たちが内装工事や工場の改造を進めています。
「この6年余り、われわれの対中投資額は10倍にも増加しました。既存の工場に比べれば、新工場は面積が4倍以上に拡大し、年間生産額は現在の5000万元から最終的に3~4億元に拡大する計画です」と欧科林格塑料科技(青島)有限公司の王耀文運営ディレクターは述べました。
ドイツ社・エルリングクリンガーの高性能材料アジア本部プロジェクトは、中国での投資拡大に力を入れている多くのドイツ系企業が行わっている代表的な事業です。ここ数年、ドイツ系企業の対中投資は著しい増加傾向を示しており、特に新エネルギー車、化学工業、機械製造などの分野での投資増加が注目されています。
中国商務部(省)が発表したデータによると、2024年1月から7月にかけて全国で新規設立された外商投資企業は31654社で、前年同期比で11.4%増加しました。うち、ドイツの対中実質投資は26.4%増加しました。多くのドイツ系企業は中国で新たな発展の機会を見出し、その製品も徐々にハイエンド化へと成長しつつ、販売ルートもより多様化している事実は、これらのドイツ系企業の中国で投資を続ける自信を強めています。
辛北爾康普(青島)機械設備有限公司の第2期生産工場の作業現場では、作業員たちが高さ4メートル強のCNC門型マシニングセンターを操作しています。保護めがねをかけた薛兵世さんはCNC門型マシニングセンターを操作して金属板のミーリング加工をしています。この金属板は17の工程を経て、10時間以上を要し、最終的に圧力分布パネルに加工されるということです。
同社は2014年に中国に生産拠点を構えて以来、すでに3回にわたって投資を追加しました。現在まで、同社の中国での登録資本金はすでに1479万ユーロ、投資総額は3700万ユーロに増資しました。
「わが社の第3期の工場はすでに完成し、第4期の工事も2026年に開始される予定です。これらの事業も、我々の増資・生産拡大事業のほんの一部に過ぎません」と辛北爾康普(青島)機械設備有限公司の最高経営責任者、最高技術責任者のコンスタンティノス氏は述べました。中国は今も急速な発展の段階にあり、同社はこの中国の大市場の一員になりたいと考えており、これは同社が中国での投資を拡大し続ける理由だと同氏は考えています。
辛北爾康普社から遠くないところに、ドイツのコンチネンタルグループ傘下の康迪泰克(青島)橡塑技術有限公司も同じように中国での投資拡大と事業展開に力を入れています。同社は2024年に年間生産額4億4000万元を達成し、自動車部品関連ソリューション事業部アジア太平洋地域技術研究開発センタープロジェクトの投資協定は2024年9月に締結され、同プロジェクトは中国で実行される予定となり、総投資額は1596万元です。
同事業部研究開発センターのテクニカルディレクターを務めるマクシミリアン氏は、「今年と来年は投資を続け、約1600万元の投資総額は研究開発センターの整備、研究開発能力の向上に用い、より多くのイノベーション成果をあげ、当面の変化しつつある市場情勢に対応していきます」と述べました。
類似の事例はまだ多く存在します。例えば、代傲電子控制(青島)有限公司の総投資額は4000万米ドルで、すでに4本の生産ラインの建設を完了して稼働を開始し、2025年にはさらに5本目の生産ラインを導入する計画で、年間生産額は2億元に達する見込みです。また、BMWグループは瀋陽工場の規模拡大と技術革新のために200億元を増資し、バイエルグループは6億元を投資し、江蘇省啓東に供給センターを新規建設する計画を発表しました。
ドイツ連邦銀行が2024年8月に発表した統計データによると、2024年上半期のドイツの対中投資額は過去最高の73億ユーロに達し、2023年通年の65億ユーロを上回りました。このうち、第1四半期のドイツの対中直接投資額は24億8000万ユーロで、第2四半期は48億ユーロに増加しました。投資の大部分は在中国ドイツ系企業の獲得した利益の再投資で、主にドイツ系の大手自動車メーカーからの投資です。過去5年間、ドイツの対中投資はEU27カ国の対中投資の50%以上を占めていました。
中国ドイツ商会が2024年12月に発表した「商業景況感調査報告書2024・2025」によると、ドイツ系企業の92%が依然として中国での事業継続を計画しており、そのうち従業員数1000人以上の大企業のなか、70%は中国への投資を増やす計画があることが明らかになりました。ドイツ系企業の51%が今後2年間で投資を増やす計画があり、そのうち87%は競争力の維持を増資の主な動機とし、同割合が2023年より8ポイント伸びました。
中国に投資すると同時に、多くのドイツ系企業がローカライゼーション事業展開にも力を入れています。フォルクスワーゲングループの中国における最初の新エネルギー車に専念する合弁企業として、大衆(フォルクスワーゲン)安徽は現在までに500社以上の生産用原材料のサプライヤーと1000社以上の一般調達サプライヤーからなる安定した提携システムを構築し、中国でのローカライゼーション事業配置を持続的に強化しているとともに、生産、研究開発、販売、アフターサービスなどの分野をカバーする整った新エネルギー車産業のバリューチェーンを確立しています。
大衆汽車集団(中国)執行副総裁・購買部責任者、大衆汽車(中国)科技有限公司の桑傑豊最高購買責任者は、「中国の自動車産業は大きな変革の只中にあり、激しい市場競争と幅広い発展チャンスが共にこのプロセスを推進しています。変化し続ける傾向に積極的に対応するため、購買分野では、我々は『在中国、為中国』(中国で事業を展開していた以上、中国の顧客と産業の需要のために)という戦略を貫き、中国での研究開発を拠り所に、中国での提携協力を深め、中国スピードを推進し、サプライチェーンの強靭性を構築します」と述べました。
ドイツの名の通った大手自動車メーカーとして、今年に入ってから、フォルクスワーゲンは中国で新たな事業を展開しています。同社は1月に、小鵬汽車と提携して中国最大の超高速充電ネットワークを構築し、中国の新エネルギー車産業の急成長に深く参与することを発表しました。3月には、同社は中国一汽と戦略的提携協定を締結し、一汽・大衆の斬新なモデルに関する計画を確定しました。一汽・大衆は2026年より、フォルクスワーゲンブランドとジェッタブランドを含む11の斬新なモデルを発売するということです。
「2025年はフォルクスワーゲングループの中国進出戦略成果の『引き渡しの年』になります!われわれは全力を尽くして『在中国、為中国』戦略の実施を推進していきます」と大衆汽車集団(中国)のベレド代表取締役兼最高経営責任者は、中国での自社グループの未来に大いなる自信と期待を持ちながら述べました。
ドイツの関係者によれば、ドイツ系企業が中国での増資・生産拡大を続ける理由は、中国の経済社会の質の高い発展の成果がドイツ系企業を含む多くの外資系企業に絶えず恩恵をもたらしていることにあります。
ドイツの経営学者、「隠れたチャンピオンの父」ヘルマン・シモン氏は、2023年と2024年にドイツの対中投資が過去最大を記録したと考えています。これらの投資が一般に研究開発センターの整備に用いられた理由は、中国が多くの分野で最も強い競争力を持っているためです。中国はイノベーションの面で努力して先頭に追いついただけでなく、多くの分野ではすでに主導的地位をキープしています。
「中国とドイツの経済一体化のプロセスは絶えず推進されています。両国の共通の価値観は、協力提携を強化し、双方に利益をもたらすための堅固な基礎です」と同氏は述べました。
ドイツ系企業の中国での発展をよりよく保障するため、一部の中国のハイエンド産業パークは優良なビジネス環境を持続的に構築し、より多くのドイツ系企業の中国への投資・増資を誘致しています。
青島中独生態園管理委員会の張雲清副主任は、同産業パークは終始一貫にドイツ系企業のパーク内での成長と発展を確保するためのビジネス環境の構築を非常に重視し、高い基準に従ってドイツ系企業センターを建設し、知的財産権連動保護メカニズムを構築していると述べました。同産業パーク内の企業の発展環境とビジネス環境を引き続き最適化し、ドイツ語諸国企業円卓会議を開催し、ドイツ系企業の実際の要望を満たすことを重視し、参会企業の発展に関わる要望19項目を収集・解決し、要望の解決率が100%に達しました。
張雲清氏は、「ここでドイツ国内のような生活環境と生態環境を整え、生産活動と生活の安心感を確保することで、進出企業の信頼性を高めます」と述べました。